草野健一

ケネスフィールド デザイナー
草野健一
「ONE OF A KIND」

大量生産されてきたものが好きなんです。大量生産されていながら現代に残っているヴィンテージには惹かれますが、”世界に一点しかない”っていうところには、あまり興味がないというか……。人が使ってきたもの、そして捨てられずに残されてきたものには、相応の理由があると思うからこそ、スタンダードな古着には、それまで愛されてきた理由があるはずです。自分の作る服が未来に残って、古着になっていたら、それはとても嬉しいことですよね。

だからというわけではないですが、僕のコレクションには定番品として毎シーズン登場する服がたくさんあります。不変で普遍なんです。ずっと同じものを作り続けていくという姿勢はこれからも続けていきたいですし。50年代のスポーツコートをベースにしたネイビーブレザー、イギリスの軍パンをベースにしたミリタリーパンツもそうだし、マルシェコートもそのひとつです。

インディゴ染めのコーデュロイを使ったマルシェコートは、シェフが厨房で着るコックコートがベースになっています。胸ポケットは古布です。古布の蒐集家であるオアスロウの仲津一郎さんに提供していただきました。工房のスタッフと手作業で裁断し、三越伊勢丹のスタッフが刺し子するという、作り手と売り手の共同作業から生まれた、物語のある一着です。

アメリカでもイギリスでもフランスでもイタリアでも、国はどこでもいいんですが大量生産されてきた服って、たいていアメリカがベースのものがほとんどなんです。しかもユニフォームであることが多いです。たくさんの人に使ってもらうために生産効率を上げ、コストダウンして、そしてみんなの手にわたって、長く着られてきた服。シャンブレーシャツ、アワードジャケット、スウェットパーカ、etc.。そういったアメリカの服への憧れが強い世代なので、このブーツはアメリカの工事現場の人の靴だよって言われて、ふむふむと納得してきたんです。だから初めてアメリカに降り立った日に驚きましたよ。なんて普通のアメリカ人はお洒落じゃないんだ!って(笑)。

男の服って、たいていユニフォームがベースで、それをアルマーニが作るとこうなるとか、ポール・スミスが作ったらこうなるっていう、そういうところが面白いと思うんです。ケネスフィールドが作るとこうなるという引き継がれる魅力を感じてもらえたらいいと思います。デザイナーズでもモードでも、アメリカントラッドでもいい。そこには人の温もりが必ずあります。

服が持つ不変で普遍な魅力って、そういうことだと思うんです。