京都歴代のれん市

「30年やっても失敗する。
日々勉強ですわ。」
〈辻和金網〉三代目 辻泰宏氏

辻和金網

辻和三郎により1933年創業。料亭などのプロから一般家庭まで愛される金網細工を手しごとにて製作。長年使ってほころびができた時は修理も手掛ける。創業以来80余年受け継いできた伝統の技を大切にしながら、時代の流れに合った道具を作り続けている。

辻泰宏(つじ・やすひろ)

〈辻和金網〉三代目。1965年、京都市生まれ。大学卒業後、家業に就く。2010年、辻和金網代表に。焼網やコーヒードリッパーなど、美しさと使いやすさを備えながら現代のライフスタイルに合わせた商品を生み出す。

1. 美しく使いやすく

まずはお客さまに気持ちよく使ってもらえるように、見た目の美しさ、使い勝手の良さを考えながら、一つひとつの商品を完成させていきます。 美しさというのは人によって感性が違いますんで難しいなあとは思いますが、用の美といいますか。手編みの作業で編み目が均一に編めたときは美しいなと思います。

2. 手編みと機械編み

手編みは編み目のカタチや大きさが自由に変えられるところが特徴ですね。機械の編み目は四角形ですが、手で編むと亀甲編みという6角の目になります。金網細工は京都の伝統的な工芸品ですが、実際にいま手編みで作っているのは京都では4軒くらいでしょうか。
修業期間は、最低10年はかかりますね。難しいのは目の大きさを均一にすること。すべての編み目が平行になっているのが理想です。ただ人間がやることなんで、よう見ると微妙にずれてくるんですよ。機械みたいに全部が正確に編めないんで、周りの編み目を見て調整しながら編み進めていく。それも技術のひとつです。
あとは、ねじりの数を変えて模様を表現したり、これも機械ではできないですね。

3. 金網細工の基本

修業でいちばん初めに作るのは茶こしです。 金網細工では、どんな籠でも真ん中から編み出すんですよ。その真ん中の菊の紋様部分を「菊出し」というんですけどね。茶こしにはこの菊出しも、通常の網の部分も入っているので、これが作れるようになるといろいろ応用できるというわけです。

4. おすすめ商品

焼網とコーヒードリッパーは私も愛用してて、朝はそれでパン焼いて、コーヒー淹れてというのが定番です。
妻が愛用してるのは、浅くカーブした丸い網に持ち手がついた万能網。そのまんまの名前ですが(笑)。料理家の先生とか、たまにテレビで使ってくれているのも見ますね。
あとはこれ、丸網足付。お鍋の中に入れて手軽に蒸し物ができるんです。鍋敷きとしても焼網としてもいけますよ。
商品で無いもんは特注品として、お店からも、個人のお客さまからも頼まれます。お店の場合はうつわに合わせた水切り網やコンロに合わせた網など、個人のお客さまだと鍋に合わせた網など、みなさんけっこうこだわってらっしゃいますね。

5. 気になるお手入れ

素材はほとんどがステンレスと銅なんですが、ステンレスは基本的にはメンテナンス不要でお手入れが楽ですね。水垢とか付いてきたら漂白もできますし、食洗機も使えます。 銅は使い込むうちに色が変わっていきますが、それは自然な現象で、味ですよね。よく緑青(ろくしょう/銅のサビの一種)とかでないのと聞かれるんですが、酸気、塩気がついたまま放置していると出てきます。緑青自体が身体に悪いことはないということは国も認めているんで、気にすることもありませんが。

6. 仕事の手間ひま

基本的に1つの商品を一気に作ることはないんですよ。編むのだけを20個、30個というふうに、工程ごとに分けて作るんですね。
やっぱり、しんどいこともありますよ。そういうときには、作業を変えて気分転換しながらやっています。

7. 作ってみたいもの

インテリア系とかいいですね。ものはまだ決まっていないんですけど、作ってみたいなあ。置物というか。別注でランプシェードとかは作っていますけど。

8. 日々大切にしていること

そんな日々考えたことないなあ(笑)。あえていうなら「失敗は成功のもと」。けっこう失敗ばかり繰り返して、30年やっても失敗する。日々勉強ですわ。

三代目の辻泰宏さん自身も愛用するという焼網を、銅の手編みの金網で美しく仕上げました。下段の細かな網がガス火をやわらかく分散し、パンがもっちりとおいしく焼けます。

〈辻和金網〉銅手編み 焼網(受け付) 15点限り 9,720円 (22.5cm角)[伊勢丹新宿店先行販売]